精神病的な心理構造

 今における認識作用は、過去の経験により再構成されたイメージ・フィルターを前提としており、実在する世界を実体としてそのまま認識していないことは自明であります。カントがいうところの「物自体」を認識していないということです。したがって、あらかじめこのように見る、聞く、認識するという前提があるということです。自己意識において、それに対する理由づけがなされますが、それは後付で本質ではありません。

 同じ物体を観察しても、私と他者との認識が一致することはありえません。会話は音声記号によるやりとりですが、それに対するイメージと結びつくことにより、互いに意味を了解することができます。しかしながら、例えば私が「りんご」と言う場合、それを聞いた他者におけるそれに対する対象イメージとは一致しないということになります。(無数の「りんご」のイメージがありえます。)それにも関わらず、やりとりにおける了解が成立するということです。

 

 一方では、精神病的な心理構造においては、過去の経験により、今における認識、未来のイメージが汚染され歪曲されることなります。自他境界も不確かとなり、妄想を形成することになります。了解可能な内容であっても、心理プロセスにより、「妄想」として捉えることが重要です。

 やりとりにおいて、私が伝えたと認識することと他者が聞いたと認識する内容において、深刻な乖離が生じることになってしまいます。